話してる間に二人の腕が緩んだので、話し終えたあとは二人の間から抜け出てそれぞれの顔を眺め見る。
お兄さんは困ったように笑っていて、彼は不機嫌そうに口を引き結んでいたから、彼に向かって図星ですかと問いかけてみたけれど返答はなかった。
「いやぁ……さすがにそれはないでしょ。いやもちろん、家族愛的な情はお互いあるとは思うけど」
こいつに恋愛的な意味で好かれてると思ったことってないし、過去の恋人たちも君のことも恋愛的に好きで付き合ってるように見えたこともないから、やっぱり恋愛感情を理解しないポンコツだと思う。というのがお兄さんの意見らしい。
「でも本人否定してないですよ?」
「それはそう。てかお前なんで黙っちゃうかな。否定しなよ」
それとも本当に俺が好きなの? とニヤニヤ顔で彼を覗き込むお兄さんは、少し前まで困った顔をしていたのに、どうやら既にこの状況を楽しむ気になっているようだ。
「アンタのこういうとこ、ホント腹立たしい」
「だよねぇ」
嫌そうな顔でお兄さんの顔を真正面からわしづかむ彼と、絶対避けれたと思うのに素直にわしづかまれて笑っているお兄さんとを見ながら、仲いいなぁと思ってしまう。思うだけでなく、口からも出た。
「仲いいっすね」
「どこが!?」
不満げな声を上げたのは彼だけで、顔から手を離されたお兄さんは嬉しそうに笑っていて、そうでしょとでも言いたげだ。なのに実際にお兄さんの口から出てきた言葉は、全く違うものだった。
「ねぇやっぱ俺と付き合おうよ。というか俺の特別になろうよ」
養子ならこいつが叔父さんだし、パートナシップならこいつが義理の弟になるよ。などと言い出していて、だいぶ話が飛躍している。そんな話、今まで欠片も出てなかったのに。
好きになってしまった先でどこまでこの人の嗜好についていけるかって話で、そこを乗り越えてこの人の特別が欲しいと思うのか、決めるのは自分だと思ってたんだけど。でもってお互いに、現状ではかなり無理そうって思ってたはずなんだけど。だからワンチャンって単語を使ってたはずなんだけど。
「おいっ、何言い出してんだアンタ」
先に反応したのは彼の方で、相当驚いているらしい。いやまぁ気持ちはわかる。
「だって俺とお前が仲良しなの、嫌そうじゃなかったから。てかいっそ付き合えばいいのに、くらいに思ってそうだったから」
「付き合えばいいのに、はさすがに言いませんけど。でもそうなって振られるのが、俺が一番傷つかない別れ方かも、みたいな気はしてます」
彼にしろお兄さんにしろ、自分が恋人でいるよりよっぽどお似合いだと思ってるのは事実で、結果自分が振られるのは、素直に仕方がないと思えそうだ。
「ほらね。てか俺は仲いいのは否定しないけど、でもさっきも言ったとおりに、家族の情だから。家族愛だから。ただ、恋愛する気も伴侶にする気も二人きりでセックスする気もないけど、仲間はずれにしないセックスをしたい気持ちはけっこうあるんだよね」
めちゃくちゃ大事に君の好きを育ててあげるから、頑張って俺の特別になって。その先で、一緒にこいつに愛を注ごう。だそうで。
なるほど、と納得してしまう部分はあった。出会った初日から3人でしたがってたし、多分お兄さんが目指しているところはずっと同じなんだろう。
旦那さんとのとんでもセックスを自分も全部受け入れる必要はなくて、彼との3人でのセックスだけ受け入れられればOKなら、そこまで難しくはないかもしれない。
なんて思ってしまうくらいに、すでに自分の価値観は崩されているみたいだから、大事に好きを育てられたら軽々超えてしまいそうだ。
続きます
もうしばらくの間、更新は夜になりそうです
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